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このアンガーマネジメントは特に部下を持つ人にとっては必須科になって随分経ちます。そう簡単に怒りをコントロール出来たら苦労しません。我慢すると自分のストレスになり、そのままだと相手のストレスになります。怒りがあるから人間らしいとも言えます。今回は、そもそも怒りのやってくる原因と対策についてまとめます。
株式会社 ア・ソリューション 代表取締役 髙橋 伸枝

1. 怒りはどこからやってくるのか?

端的に言えば怒りという感情は自分が作り出しているものです。自然発生的に湧いてくる当然の感情でもあります。無理してわざわざ怒る人はいません。考え方として怒りという感情は「相手・他人」が作り出していると思いがちですがそうではありません。対象を相手でなく自分に置き換えるだけでクールダウンできます。

❶ アンガーの語源

Angerの語源をたどると、昔はAngrと書いて苦痛・悲しみという意味だったという説があります。古ノルド語という8世紀頃にインドやヨーロッパで使われていた言語がアンガーの語源のようです。後に述べますが怒りイコール悲しみである、という事がこの語源に深く関係しているのではないでしょうか。

❷ 怒りの生みの親

怒りという感情には必ずその対象があります。モノに怒りをぶつけても相手は反応しないので特に問題はありません。一方、人間関係において怒りの対象は様々です。1.上司が部下に対して2.親が子供に対して3.恋人・夫婦間で4.お客様が店員に対してなど、怒りが対人コミュニケーションの邪魔をすることはたくさんあります。一見すると、怒りの生みの親は1~4の関係の中で「相手」だと思えます。ところが、相手が誰であれ生みの親は他ならぬ「自分自身」だったのです。

怒りの背景

◆ 誰かや何かを自分の思い通りに動かそうとする
◆ どちらが正しいか?と白黒決着をつけようとする
◆ 自分の怒りを相手の責任にする
◆ 自分の自己主張を優先して相手の自己主張を受け入れない
 (自己主張する権利は誰にでもある)
◆ 相手の反応が想定外で予定が狂った
◆ 相手が理解しないのは自分の伝え方の問題でなく相手が悪い


2. 怒りの正体

怒り・怒るという感情はとても疲れます。あー、スッキリしたと思ってもそれはカン違いです。すごいエネルギーを消費して相手に怒りをぶつけることほどもったいないことはありませんよね。笑い疲れは心地よい疲労感があり、お腹も空くし夜も眠れますが怒り疲れはどうでしょう?一日中治まらず、興奮冷めやらずで不眠症の原因にもなってしまいます。それでは自分でストレスを作り出しているようなものです。どうやら、怒られた人以上に怒った人の負担の方が大きそうです。


♦ 怒りとムカつきの関係 ♦

例えば上司が怒りをあらわにしているときの部下の気持ちはどうでしょう?怒られた内容に納得がいかなければ部下の感情も本来は怒りです。しかし、上下関係となると怒りに怒りで返せないので陰でこっそりムカつくという感情になります。これがパワハラにも起因しています。立場や関係性によってこみ上げる感情・その表しかたにも違いがあります。


❶ 怒りの種類

ひとくちに怒りと言っても種類があります。何、に対する怒りなのか?を自己分析してみると大きく分けて以下の4つではないでしょうか。
1.場当たり的で瞬間的なもの・・・単に虫の居どころが悪い・機嫌が悪い・事前に警告した問題が本当に起こった(だから言ったはずだ・私の考えは正しい)
2.自分にとって不利益なこと・・・第三者の影響を自分が受けることの防御反応
              (上司にも上司がいる場合など)
3.相手にとって不利益なこと・・・せっかく昇格を考えていたのにこんなことじゃ推薦できない
4.正義を振りかざす・・・こうあるべき論を強く持っておりそこから外れると許せない
1~4.それぞれを見ていきましょう。

1.場当たり的で瞬間的なものは、文字通りその場限りなので本人が覚えていないことが多くあります。しかし、怒りをぶつけられた相手はそうはいきません。イヤな思いはシッカリと心に刻まれます。顔は笑っていても心は許していないのでその後の修復作業にはかなりの努力が必要です。普段から信頼関係が築けているなら、自分が怒りをぶつけたことを忘れずに「あの時は本当に悪かった」と心から謝罪すれば水に流してくれるかもしれません。時に、怒りも人間味として伝わるなら、そして思いやり・優しさが根底にあるなら完全に封じ込める必要はないかもしれません。
2.自分にとって不利益なことは、仕事をしていればたくさんあります。特に、責任者である店長・マネージャー・リーダーとなれば目標達成の責任があるので結果が自分の評価に直結します。何か問題が起こるとそれが原因で未達成だったとか、無駄な時間を取られた、などどうしても「他責」にしがちです。(他責とは、他人だけでなく他の要因を含みます)不利益は数字だけでなく、自分の休みを返上せざるを得ない事態やシフト変更などいわゆる「やらなくて済む仕事を増やされた」ことも起因します。
3.相手にとって不利益なこととは、昇格目前で問題を起こしたとか、顧客からクレームを受けたなど一見、相手への思いやりのように見えますよね。しかし、実は期待を裏切られたとか、顧客を失うとか、結局は自分の不利益であることに気づかないだけです。相手の立場になって考えると、それで怒られるのは大きなお世話、かもしれません。
4.正義を振りかざすとは、正義自体が自分基準であることを指します。あるべき姿は誰でも持っています。こうありたいという願望・ねばならぬという信念が正義を作り出します。人によって価値観も様々です。規則・ルールは正義というより誰かがなんらかの基準に基づいて決めたものです。規則を破ったことを正義感に基づき正すことは必要です。しかし、答が一つではないことが仕事にはたくさんあります。正義のはずがいつの間にか持論展開になっているかもしれません。

❷ 怒りの表しかた

怒りの表現方法も相手によって、状況によって様々です。以下の3つは悪気はなくとも、自分の傾向・感情表現の手法・クセになっているかもしれません。
1.大声で怒鳴る・表情は鬼のようになる・・・聞いている人は内容が頭に入らず何を怒られたのかすら覚えられず逆に冷静になる
2.静かな声だが口汚く罵る・・・深く静かに心に響き渡り人格を否定されたような気分になり遺恨として残る
3.ネチネチとしつこく責める・・・自分の理論がハッキリしておりそぐわないことに対して理詰めで責め立てるので難しすぎて相手に伝わらない

この3つは、怒りという感情を表す方法としてふさわしくありません。
怒鳴りつけたり罵声を浴びせることが怒りの表現ではありません。感情を表すことと感情的になることは違います。(後述します)

➌ 怒りのスパイラル

怒られたからそれが理由で相手が改善することは非常に稀なケースです。子供なら親に怒られるのでやめることでも大人には通用しません。反発心をかうのが関の山です。それだけではなく、もし相手が同じ間違いを繰り返したらどうでしょう?何度言ったら分かるの!!と一回目以上に怒り心頭ですよね。これが怒りスパイラルです。同じ間違いでなくとも、同じ相手が何かミスをしたら「またあなたなの?!」という気持ちになってしまいます。怒ったからもう大丈夫だろうと思うこと自体、相手がイヤな思いをしたことが分かっている証拠です。イヤな思いを二度としたくないなら気をつけるだろう。もうミスは繰り返さないか?というとそうとは言えません。誰だって間違えたくて間違っているわけではないのですから。逆に怒られると委縮して、もっと大きなミスを犯してしまうこともあります。結局、感情的になると良いことは一つもないのです。

3. 感情をコントロールするメリット・デメリット

感情は主に5つあります。喜び・悲しみ・怒り・恐怖・嫌悪などでまたその強弱があります。感情コントロールと言っても自他共にマイナスとなる「怒り」をコントロールできたら何よりも自分自身の生活も心も豊かになります。怒りの感情をコントロールするには、理性を働かせて感情を抑制するのですが「我慢すること」とは違います。我慢はいつか爆発するし、大きなストレスになってしまいますよね。感情をコントロールするには、制御することのデメリットも知っておきましょう。

❶ 感情をコントロールするメリット

◆ 嬉しいとか楽しいというプラスの感情を積極的に表せば表すほど人が集まってくる
◆ 怒りや嫉妬というマイナスの感情をコントロールすれば自分が楽になる
◆ 建設的な話し合いができて相手のモチベーションが高まる
◆ 相手の本音が引き出せて信頼関係が築ける
◆ 冷静に後悔しない判断ができる

❷ 感情をコントロールするデメリット

♠ 無理に抑え込むと精神的疲労・ストレスがかかる
♠ 抑制しているつもりが相手への遠慮となり言いたいことも言えない
♠ 自責の念が強くなり自信喪失になる

実はこのデメリット、怒りについて本当に理解していれば起こらないことです。無理して自分を変えると続かないし、それは自分でなくなってしまいます。どこまでが人間味の範囲でどこからが改善すべきなのか?を振り返るきっかけにすることが大切です。では、無理しないコントロール法を紹介していきます。

4. 怒りのコントロール法

昔、俳優の竹中直人さんが笑いながら怒るという演技で大ヒットしたことがありました。本来、感情・表情・言葉はワンセットです。それなのに、こんな難しいことをやってのける竹中さんは本当にすごいと思います。ここまでお読みいただいた方は、もうコントロールの仕方にお気づきかと思います。怒りの原因を知れば自ずとコントロール法も見えてきますよね。

❶ 感情的になることと感情を表す違い

最近はパワハラが怖くて叱れない上司が増えています。 相手に真剣な思い・気持ちを伝えることは大切です。本当に自分のことを思って言ってくれている、と感じさせるには怒りを使わず「叱る」スキルを磨くことに他なりません。実は、叱られる側より叱る側の方が何倍もエネルギーを使っています。どうしたら分かってもらえるか?何が本人の幸せか、そして「お互いに得られる良い結果」を真剣に考えて事前準備をすることが重要なカギです。

● 感情的になる(無自覚)・・・自分の感情のおもむくまま相手にぶつける。責める言葉が多く抽象的で一方通行。相手の反応を正しく見る余裕がない。
● 感情を表す(自覚)・・・自分の思い・願いを伝えるために意図的に苦言を呈す。改善指導にふさわしい厳しい言葉を使い具体的な指摘。相手の言い分や事情を聞く余裕がある。相互通行。

❷ 自己否定でも自己犠牲でもないマインドセット

感情コントロールをするデメリットで述べたように、自分を否定したり犠牲になる必要はありません。カチンときたり、それはないだろう!と怒りが湧いてきたらある程度の我慢は必要ですが、せいぜい数秒の我慢です。これはポイントがあって「あ、自分は今怒っている」とモニターに映し出す方法です。このままでは怒りを使いそうだ、と自覚できれば一度深呼吸して冷静になれます。自分の考え・相手への期待を伝えるためにはあくまで理性的であることです。

怒りは願いであり悲しみ

◆ カーッと怒りが湧いてきたら自分は悲しんでいるんだと考える
◆ 悲しいのは願いが叶わなかったからだと考える
◆ ~して欲しかった・~して欲しくなかったという願いとのギャップ
◆ 相手にもそうできなかった事情や背景があることを理解する
◆ その事情や背景を共有して今後の対策を一緒に考える
◆ 「納得」でなく「強制」するとまた怒りが生まれる
(願いの強制はまた怒りに変わる)

➌ メンタルデトックス

メンタルとは、精神的なもの・心理的なものです。これまでの経験で溜まったものを洗い流して心を更地(さら地)にすることも必要です。過去の経験や他からの情報が今の自分を作っています。自然発生的に湧いてくる自分の感情を押さえつけるのではなく、自分の感情を素直に受け入れて「感情の表しかた」を工夫しましょう。
<デトックス方法>
1.一週間単位で今週怒りが湧いた場面を振り返る
2.その原因と理由を考えてみる
3.どう対処したか、解決できていなければ対策を練る
4.怒りイコール悪、と思わずに解決した良い結果をイメージする
5.趣味・違う環境に身を置いて定期的にリフレッシュする

つまり、感情のコントロールとは「快・不快」「愉快・不愉快」のバランスをコントロールすることなのです。

まとめ

いかがでしたか?怒りという感情を分析してみることは、自分と向き合うチャンスではないでしょうか。世の中、自分の思い通りになることなどほとんどありませんよね。常に相手がいてその価値観も環境も違います。自分らしさを失わずに、ちょっと工夫して心穏やかに過ごしたいと思います。

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