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株式会社ア・ソリューション
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コラム 接客販売

売上が2年間で4倍に伸びた実体験から得たこと


高橋伸枝 株式会社 ア・ソリューション 代表取締役
店舗での接客や販売方法は時代と共にどんどん様変わりしています。ジュエリー・時計などラグジュアリー製品は例外として、販売スタッフに頼まなくてもお客様が自由に手に取って試せるお店も増えました。もう、私の現場時代のようにスタッフの感じがいいから思わず買ってしまったとか、親身な対応ならリピートするということもなくなってしまったのでしょうか?お店に来る前に商品の情報も得られるし、別に接客に期待もしていないし望まない?とは思いたくありません。そこに人がいる以上、お客様を歓迎する挨拶に始まり商品紹介からクロージングまで接客の流れには基本があります。一時は声かけを煩わしいと感じるお客様の声がクローズアップされて「声をかけないで」という札をつけて買い物するというテストをした時代もありました。しかしそれは長続きせず、やっぱり販売スタッフのヘルプ・サポートは必要だという流れに戻りました。お客様に任せていたら、売上はなかなか上がりませんよね。売上あげるぞ!と張り切ったのではなく、結果として売上げが伸びた私の体験談をお伝えします。

私の扱っていた商品は化粧品です。ある百貨店のチーフが退職して、その後任として配属になりました。来店客数も多い有名百貨店なのに業績はイマイチでした。店頭に立ってみると、毎日がヒマでヒマで退屈でした。他のブランドはいつもお客様で賑わっていて(そう見えた)うらやましく感じていました。接客が仕事なのに、お客様が来ないのでやることもなく、同じところを何度も掃除して売り場はいつもピカピカでした。自分がお客様の立場なら、この店売れてないのかな・・・人気ないのかな・・・と、ヒマそうなお店に魅力は感じません。もし、誰もいないところの一人目のお客様になったら、店員さん全員に取り囲まれて自分だけに集中されるのもイヤだな、と思うのは私だけでしょうか。ヒマなおかげで、他のブランドの様子を見ていたら一人ひとりのお客様の滞留時間が長いことに気づきました。ウチは、そもそも顧客と呼べる人が少なかったため他のブランドのように話が盛り上がる場面も少なく、一人接客が終わると閑古鳥という状況が続きました。そこでまずやったことは、貴重な一人のお客様にできるだけ長く居ていただくための工夫です。買う買わないは一切関係ありません。その結果、一人がいる間に他のお客様がのぞき込んでくれるようになり、切れ目なく接客するチャンスが増えました。まさに人が人を呼ぶとはこのことです。更に他のお客様が笑っていたり、楽しそうに過ごしているとあとから来る人も引き込まれるものです。この体験から得たことをノウハウに置き換えて、現在の研修に生かしています。今回はその第一弾をお届けします。


1.実際に行った5つの行動

❶ お客様を選ばない

売上を伸ばそうと思うと、どうしても「買いそうなお客様」を物色する傾向があります。つまり、見るだけで買わなそうな人には時間を使いたくない。と、効率アップを目指したくなるものです。私自身、販売を始めた頃はいわゆる「当たり」をつけて接客していました。ところがその「当たり」が外れて、買うはずの人が買わない。見るだけだと思ったのに、高額商品を購入するという経験をしました。そもそもお客様を値踏みするなど失礼な話はありません。何故、当たりがハズレるのか?答えは簡単です。買うか買わないかなど、お客様自身も分かっていないからです。私の経験上、お店にいる間・接客中の顧客心理として買っちゃおうか、やっぱりやめようかと何度も結論が変わるものです。お客様が途中で気が変わることなど日常茶飯事です。更に、人にモノを売る、という不自然な行為を自然にやるためには誰が買う人かなど考えるだけ時間のムダです。どんな行動を取ったら買う意思表示なのか?について、ある程度の傾向はありますがそれを観察してもあまり意味はありません。極端に言うと、買う気のない人に買っていただくこと、その気のない人をその気にさせることがプロの販売員だと私は思っています。まさか、お客様の身なり服装で判断することはないと思いますが、世の中の販売員さんは各自基準を持っているのではないでしょうか?制服を着た高校生らしき人がショーケースを覗いていたとき、そろそろメイクに興味が出てくるお年頃だな・・・と思って声をかけたら、お母様への誕生日プレゼントを探しているとのことで、2万円の香水を買っていきました。コツコツとお小遣いをためた話を聞いて、いつになく真剣に選んだ記憶があります。ちょっとかっこいい言い方をすると、買い物には一つひとつそのお客様の物語があります。それを共有共感できる販売員が、顧客に支持されて売上を伸ばすことにつながります。そして、仮にそのときは買わなくても良い印象を思い出してまた来てもらえます。売上を伸ばしたければ、お客様を選ばないことです。

❷ 売れる時間に人員を揃える

売れる時間とは来店客数が一番多い時間帯のことで、正確には売上がとれる確率が高い時間という意味です。お店によって、平日と土日祝日でも異なりますのでシフトそのものの人数調整も必要になります。しかし、大切なことはその日出勤している人員のワークスケジュールです。食事・休憩の時間をずらしたり、付帯業務の時間帯を工夫することで全員接客体制を作ることで売り逃しがなくなります。毎日のルーティンで、午後の休憩の一便を16時~と決めていたとしても混雑が予想される日は14時からに繰り上げるなど臨機応変さが求められます。当たり前のことで、一見簡単そうに見えますが、周りの状況に合わせて毎日調整していたことを思い出します。私は百貨店勤務でしたので、北海道物産展、九州物産展など人気の催事があるときは特に気を付けていました。普段よりたくさんのお客様が来店なさるのはもちろん、上のフロアからのシャワー効果で普段より明らかに客数が多いため、売り場の体制をそれに合わせていました。逆に、日中の客数が少ない日は一度に二人で休憩に行くなどして、混雑する夕方17時以降に備えていました。先を読んだシフト調整によってお客様をお待たせすることもなくなり、売上にもつながりました。一人ひとりの接客スキルや販売力だけでなく、物理的な体制作りも大事な要素だと実感しました。

❸ 予告編と関連紹介

一人のお客様の滞留時間を長くするには、いろんなものを試してもらう、試したくなるような提案をすることです。私は、ところでお客様〇〇はご存じですか?ところでお客様〇〇も試してみませんか?と自分が自信のある商品を紹介していました。もちろん、お客様がご自分から興味を示してくれたり会話がはずんでどんなものが好みか?などが分かればそれに合わせるのがベストです。しかし、好みを探ろうとして、根掘り葉掘り聞くのは「それ聞いてどうするの?」「何か勧められそう」と警戒心を抱かせる危険があります。察する、などと難しいことも言いません。あれば便利、使えば満足と思える商品を決めておいて、明るく楽しく気楽に紹介することがポイントです。私がよく使っていた効果的なフレーズがあります。それは「次回のためにご参考までにこちらの〇〇を紹介させてください」という言葉です。この「次回のために」がキーワードで、今ここで追加販売されないな、という安心感を与えることができます。別に今日売れなくてもいいや、と気楽に伝えた結果、その商品が気に入って、じゃあそれも今日もらって行こうかな・・・とその場でお買い上げいただいたことも何度かありました。目的のものを買って終わり、では、わざわざご来店いただいたのに申し訳ないと思います。何か一つ、印象に残るもの・印象に残ることをお持ち帰りいただければリピートにもつながります。お客様の隠れたニーズを引き出すには、積極的にご提案することです。


「本日はありがとうございました。こちらの〇〇ですが次回ご来店のときに、是非、お試しいただきたいので少しだけ紹介させてください」

「ありがとう。でも、あんまり時間ないんだけど・・・その〇〇ってそんなにおススメなの?何がいいの?」

「お話を伺っていて、お悩みを解決できるアイテムだと思います。では、2~3分ほどお時間をいただきますね」

★ポイントは会計が終了してからがベスト

♦ 関連紹介とは何か?

化粧品では関連販売・アパレル他ファッションアイテムではコーディネート販売と表現できます。広い意味で「トータルコーディネートの提案」と言えます。なりたい肌を目指して見せたい自分をメイクアップで演出する。TPOに合わせて自分らしさを表現する。どんなシーンでも、キレイにかっこよく過ごすことは何よりのモチベーションです。それを個別のお客様に合わせて積極的にご提案することを関連紹介と定義付けます。あれもこれもとたくさん勧められるのでは?という警戒心を取り除くために、一点のお買い上げが決まる前に紹介しておくことが大切です。つまり、気に入った商品が分かった時点でそれに合った、付随した他の商品を一緒に紹介するということ。これなら、上記でも述べたように追加販売にならないので、お客様も安心して試すことができます。


❹ チーム全員でお客様を共有する

お店によってスタッフ人数も異なりますが私は二人からチームである、と考えています。直接接客しなくとも、その場にいた他のスタッフも巻き込んで、お客様を覚えておくことがでその後の結果が大きく変わりました。顔を見て挨拶したかしないかによって、自分が担当しなかったお客様を「お店の顧客」として捉えることができます。お気に入りの販売スタッフがいるのは良いことですが、その人がいないと帰ってしまう、楽しんでもらえないのでは困ります。私は、お店を異動したときにこんな経験をしました。「あら、〇〇さんいないの?」と他の店に異動したスタッフを指名されました。「申し訳ございません、〇〇は他店に異動になりました」と言ったら「あ、そう・・・〇〇さん以外に誰も知らないのよね~・・じゃあいいわ」と帰りそうになったので私は慌てて「〇〇の後任で来た髙橋と申します。是非、今後私に担当させていただきたいと思います」とお伝えしてお客様は渋々受け入れてくれました。その後は、努力の甲斐があり私を気に入って下さり顧客で居続けてくれました。ここから得たことは、誰か一人が抱え込むのではなく、スタッフ全員でお客様を知ること。いつもの担当者が休みでも、〇〇様ですね?と声をかけるだけでお客様は大事にされていると感じます。そして、会話も弾みやすくなり売り場が賑わうので一石二鳥です。これが結果として売上につながった理由は、担当者が不在でも予定していた商品を購入する。全員が関わることで、各スタッフがつけている口紅、アイシャドウ他のアイテムに興味を持ってもらえる。洋服でも同じことが言えると思います。私は、マンツーマンオンリーの接客否定派です。「みんなで盛り上げて」お客様をもてなす。それが結果として売上が伸びた貴重な体験です。


(他のスタッフに)「□□さん、ちょっと来てください」「〇〇様、もし私が不在でも分かるようにしておきますので□□を紹介しますね」

「そうなの?じゃあ、髙橋さんいないときはよろしくね」

「かしこまりました。いつもご来店いただいているのは存じていました。いつでもお立ち寄りくださいね」

「ありがとう、またね」


❺ 商品知識と周辺知識の活用

1.商品知識 ➡ 商品そのものの特徴・効果的な使い方・アフターケア・ショップでできるメンテナンス&サービス
2.周辺知識 ➡ 商品とは直接関係のない同じ分野の情報・ファッション全般・ビューティ全般・アレンジ方法

お客様が興味を持って聞いてくれるのは「周辺知識」です。興味だけでなく、その販売員から有効な情報が得られれば自然と滞留時間が長くなり印象にも残ります。自社製品について詳しいのは当然ですが、例えば洋服を買ったらヘアスタイルの話や、メイクアップの話。化粧品を買ったら肌だけでなく傷んだ髪のお手入れ法や、メイクアップに合う今年流行りのファッションなどです。たとえば、各化粧品会社はその季節のトレンドに合った新色を発売します。となれば、化粧品単体の話ではなく他の情報提供ができると会話が弾みます。ついでに、お客様はさすがここの販売員さんはいろんなことを知ってる。なにかあればまたここで買おう・相談に来よう、と思っていただけます。自店で扱っていないものでも、ある程度の知識を身に付けておくと、そこから話が盛り上がって気が付いたらもう一品お買い上げいただけた、という経験をしています。話はそれますが、世間話の長いお客様に困るという相談を受けることがあります。そんな時、周辺知識を使って商品の話に戻す技にも役立ちます。ご来店から帰るまでずっと商品の話だけではお客様も販売員も緊張しっぱなし、だと私は思います。つまり、いろんな角度から様々な話題作りができるようにするということです。

2.数字の組み立てかた

❶ 接客人数の設定

目標達成に向けて日々の予算を立てる際、平日・土日の配分を考えて設定するのは当たり前ですよね。そして、今日は達成したとかしなかった、など、どうしても売上ベースの考え方になりがちです。気が付いたら残り3日となり、結局予算未達でガッカリ、一生懸命頑張ったのに・・・という経験を何度もしました。売上の計算式はシンプルに客数×単価です。そこで、考え方を変えてメインの目標を一日の客数にしたところ、自分を含めてスタッフのプレッシャーがなくなりました。ファーストstep:今日は何人のお客様に声をかけるか?セカンドstep:お買い上げに結びつけるにはどうすればいいか?という本来の姿に戻り、チーム全体の殺伐とした雰囲気もなくなりました。売らなきゃ!ではなく、接客しなきゃ!に変わった結果、業績も伸びていきました。まずは日々の接客数・それに対する買上率をしっかりと記録する習慣を作ることがスタートです。

❷ 目標設定のポイント

上記の例に、あえて客単価upのパターンを設けていません。私の経験では、客単価は結果であり目標にするとどうしても無理な接客になってしまうからです。そうは言っても、あまりにも単品買いが多かったり、推奨品の売れ行きが悪いときのために客単価を上げる仕組みは2つあります。
1.高額の商品を売る商品単価アップ 2.一人のお客様に複数の商品を売る個数アップ
推奨品が高額の場合は、その商品の魅力を十分に顧客に伝える努力が必要です。私も一時、単価アップを掲げて失敗したことがあります。それは、販売個数を増やして客単価を上げるためにお客様全員に2点ずつ買ってもらおうと努力したことでした。間違ってはいないのですが、よく考えてみると「全員に」ということが初めから無理な話でした。2点買う人もいれば3点買う人もいる。未購入の人つまり、ゼロの人もいて結果2点になるのが現実的です。そこで、単価を上げる発想ではなく、接客数を増やして買上率を高めることに集中しました。その結果、売上目標達成に結びつきました。まとめると、目標達成に向けて★何人接客して★そのうち何人にお買い上げいただけるか?です。しかし、そもそも入店客数が少ない場合、通路から無理やりお客様を引っ張ってくるわけにいきませんよね。それなら、店内の雰囲気を活気づける・スタッフの動的待機・ディスプレイの創意工夫で中から外に向かってアピールするのが効果的です。私は、通路の近くにスタッフを配置して目が合ったお客様に笑顔を向けることを続けていました。その人の持つ「気」のようなものがお客様を呼び入れた貴重な体験をしました。なんとなく入っちゃた、とお客様に言われたときは心の中でガッツポーズでした。

❸ 予算配分のポイント

月間で設定したあとは、平日・土日などの顧客動向に合わせてメリハリのある配分が必要です。毎日、又は週単位で達成したかどうかをチェックして、修正していくことで月末になって各スタッフがあと一人接客していれば目標達成していたのに・・・という残念な結果を招かずに済みます。私はギリギリになって数字をチェックして、時すでに遅しで達成率98%の悔しさを何度か味わいました。その経験から、軌道修正が間に合ううちにそれまでマイナスしていた分を翌週以降に均等に上乗せしました。結果、当初計画よりも日々の予算が高くなります。しかし、その結果、未達のマイナスを最小限に抑えることができました。何もせず、ただ気合いと気持ちで頑張っても結果はそう変わりません。早め早めの調整が功を奏したことから、数字って生き物だな~と実感しました。又、いつも成績の良いスタッフに頼りたくなりますが、それが続くといずれ疲弊してしまいます。最悪の場合退職につながりかねません。かと言って、均等割りはかえって不公平です。スタッフと1対1で話し合いながら、本人が納得できる目標設定をするのが達成の秘訣です。自分に与えられた目標を達成することが一番のモチベーションになるので、優秀者とペアを組むなどして、未達成のスタッフの引き上げ・育成も同時に行っていくことが大切です。

まとめ

2年間で売上を4倍に伸ばした話を要約してお伝えしてきました。商品さえ良ければ売れる。なかなか売れないときは販売テクニックを磨く。という考え方も否定はしませんが、物が溢れているこの時代、人対人の気持ちを大切にするという原点に立ち返ることも必要だと感じています。私の常套句は「売上はお客様が作るもの」「お客様が売上を作りやすいサポートをするのが販売員」です。接客のありかた・売り場の体制を一度見直すきっかけになれば幸いです。


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