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接客販売においてのラストシーンとも言えるクロージングは、アプローチと同じくらい複数のパターンがあります。お客様側から購入の意思決定をしてくれればいいのですが、たくさんの商品があり見れば見るほど迷ったり悩んだり、最後は分からなくなって帰ってしまうこともあります。クロージングとは何か?スタッフの役割は何か?決定率を上げる方法について紹介します。

株式会社ア・ソリューション 代表取締役 高橋伸枝

1.クロージングとは何か?

クロージングを直訳すると、閉会・閉幕という意味です。接客販売の現場においては商談を成立させる・取引きを終わらせるという意味で使われています。クロージングとは「接客のしめくくり」と言えます。ところが、実際にはお客様が買うか買わないかの結論がスタッフ、販売員の腕次第という解釈になっています。クロージングテクニック、と言うからには接客販売手法の一つですので間違いではありません。お客様の背中を押す一言とは?と日々、試行錯誤している人も多いのではないでしょうか。クロージングの在りかた、販売員・スタッフの役割について詳しく見ていきましょう。

1.クロージングの目的

何故、クロージングが必要なのでしょうか。それは、お客様が購入を決定しやすいようにサポートする必要があるからです。自分で選んでカゴに商品を入れるセルフショップではお客様が自分で判断できるように、POPと呼ばれる大きく見やすい値札やアピールポイント、商品特徴を書いたものが置いてあります。お客様一人で迷うことなく買い物ができますので、生活必需品を扱うお店に多い販売手法です。販売員がクロージングする目的は、お客様の迷いや不安を払拭して本当にいいものを安心してお求めいただくためです。そして、忘れてはいけないことは商品を選んで決めたのはあくまでもお客様である。ということです。お客様の選択を褒めて認めて背中を押すことがクロージングの目的です。

2.クロージングの注意点

接客のしめくくり、として注意しなければならないことが2つあります。

❶ お似合いですよ、ステキですよ、いいですよと何度も繰り返すのは要注意です。必ず、理由を添えましょう。どこがどうして似合うと思うのか?どんな点がステキなのか?を具体的にお伝えすることが大切です。漠然とした言い方だと、お客様の気持ちを動かすことはできません。また、お客様の言葉だけでなく表情や仕草も見て迷う気持ちを共有しましょう。

❷ お客様が商品に対して否定的なことを言っても、それを否定するのはやめましょう。かと言って「おっしゃる通りです」などと同意する必要もありません。最後の最後に、買おうかどうしようかと本気で考えていると、後悔したくないな・・・失敗したくない・・と思うものです。そこで、これを聞いて確認して、それが大丈夫なら買おう!と、ダメ押しの気持ちで「確認」する心理があります。一旦、その懸念と心配を受け止めて大丈夫な理由を明確にお伝えしましょう。

お客様の否定的な発言を受け止める

商品そのものを否定しているのではなく、ある程度接客が進んだ段階でのネガティヴな発言は実際に買ったあとのことを心配している可能性があります。買ったのはいいけど本当に使うかな・・・前にも似たようなものを買ったけどあれは失敗だった、など自分の不安を解消したくて否定することが多いものです。そんな不安を共有して安心材料を提供しましょう。

2.クロージングのタイミング

クロージングにもタイミングがあります。お客様によって異なりますが、お客様任せにせず、お客様が決めやすいようにサポートするのですがそれは「決め手」を提供することです。では、どんなタイミングがあるのでしょうか。

1.同じ質問を繰り返すとき

① 商品について・・・本当に雨の日に使っても大丈夫ですか?など、最初の段階で既に使えることをお伝えしたのに同じことを聞く
② 値段や支払いについて・・・これ、いくらでしたっけ?カードは使えますか?など、知っていたがあらためて確認する
この2つは、買う前提での質問です。特に①は、はい、大丈夫です。で終わらせずに商品特徴を簡単に伝えて大丈夫である理由をお伝えしましょう。

2.無言で考えているとき

つい、やってしまいがちなことは「間」がこわくて、商品特徴や似合う理由や、あったらどんなに便利かを一方的にしゃべり続けることです。なにか言わなければ、と焦ってしまうのでしょうね。その必要はありません。かえって逆効果になってしまいます。

ポイント① 一緒に考える・・・迷いますよね~と「間」を共有しましょう。
ポイント② 迷う理由を聞く・・・どんなことが気になっているのか聞いてみましょう。

一概に「間」を時間に換算することは出来ませんが、お客様が黙って考えているときに放置することはタブーです。ストレートに「どこが気になりますか?」と聞くのではなく「仮定質問」を使いましょう。仮定ですから外れても構いません。「似たようなものをお持ちですか?」がきっかけとなって「そうじゃなくて、〇〇がね~」というように悩む本音が聞ける有効な方法です。

3.意見を求められたとき

その商品に詳しい販売員に意見を求める、ということはお客様が信頼している証拠です。どれも似合うので、お客様のお好み次第ですね~などと突き放してはいけません。プロとしての意見やアドバイスを求めているのですから、自分のセンスと確かな知識で堂々とアドバイスしましょう。かと言って、販売員がすすめるものを買うとは限りません。決めて欲しいのではなく「決め手」となる理由や情報が欲しいのです。プロの意見を聞いてお客様自身が決める。このことこそが販売員の存在理由ではないでしょうか。

お客様の手元・視線をチェックする

お客様は商品の気になるところに手をやったり、視線を注ぎます。ここが少し長すぎるかな・・・ちょっと大きいかな・・・など、自分のイメージと少し違う時に言葉ではなく動作に表れます。その動きや視線に気配りして「仮定の代弁」を使うと迷う理由が共有できます。

YouTubeでも紹介しています!

クロージングテクニックについて動画で解説しています

3.トークバリエーションの活用

クロージング成功に効果的な3つの話法を紹介します。

1.二者択一法

2つの質問で絞り込んで購入意思を固める方法です。

✅ たとえば〇〇と××では、どちらがお好みですか?
✅ こちらの〇〇とこちらの××であれば、どちらがよくお使いになりますか?
✅ 〇〇はお休みの日に、××はお仕事用とした場合すぐに必要なのはどちらでしょう?
このように、AかBか選択肢の幅を狭くすることで決めやすくなります。お客様が結論を出しやすいように導く手法です。

2.同意確認法

お客様の同意を得ながら決断を促す方法です。

✅ 〇〇はたくさん持っているとおっしゃっていましたよね?
✅ 休日は出かけることが多いとおっしゃっていましたよね?
✅ 結局いつも〇〇を買ってしまうとおっしゃっていましたよね?
このトークのあとに「~とのことですので〇〇がふさわしいと思います」と商品をおすすめする理由を伝えます。これは、お客様自身がおっしゃったことを覚えておく必要があります。お客様が思い出して決断しやすくする手法です。

3.結果実例法

使ってどんなメリットがあるのか、第三者の事例をあげたり使用法を実演してどのように便利なのかを伝える方法です。

✅ 一カ月使い続けると〇〇になったとおっしゃるお客様もいらっしゃいます
✅ 実際に使うとこのようになります/このような組合せが可能です(実演)
✅ この〇〇をプラスしたら以前より疲れにくくなったというお声も多いです
商品は実際に「使う状態で見せる」ことが鉄則です。お客様のイメージが具体的に描けるように工夫することが必要です。注意すべき点として、第三者(他のお客様や販売員自身)を例にあげるときは目の前のお客様をたてるクッション言葉を使いましょう。お客様ほど詳しい方ではありませんでしたが・・・など、他人の情報を伝えるときは比較されたと感じさせないことも大切です。

まとめ

いかがでしたか?クロージングとは買うか買わないかを販売員が決めることではなく、お客様が購入を決定しやすいようにサポートする。商品特徴をアピールするのでなくお客様に「提案」することなのです。その提案方法とタイミングについて述べてきました。クロージングするタイミングは「時間」ではありません。30分経ったから、とか「そろそろかな」などアバウトに計るものではありません。どんな状況になったら、話を整理するか?これは、その接客一つひとつによって変わります。話好きなお客様、決断の早いお客様もいらっしゃいます。自分なりのクロージングの基準を決める参考になれば幸いです。

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