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社員の働きかたが多様化する中、様々な価値観を持つ世代の人材各自の能力を引出して育成することが業績アップの鍵です。上司と部下のジェネレーションギャップを埋めるには高度なコミュニケーション技術が求められます。管理職に就く人たちの意識改革と行動変容がチーム一丸となって結果を出すことにつながります。

株式会社 ア・ソリューション 代表取締役 高橋 伸枝

1.リモートコミュニケーション

対面に比べて思い・感情・ニュアンスが伝わりにくいのがリモートによるコミュニケーションです。伝えたつもり、分かったはずというコミュニケーションギャップを防ぐには手段に応じたスキルアップが大切です。

❶ メールやチャットの活用法

メール 👉 片方向ずつの非同期型コミュニケーション。受け取る側の都合で開封されるため、送った側のタイムリーは通用しません。受け手次第の解釈となり、ニュアンスが必要な用件が伝わりにくいデメリットがある一方、いつどこからでも送れることと添付ファイルが遅れるメリットや何よりも証拠が残ることがメリットです。
チャット 👉 片方向ずつの同期型コミュニケーション。複数人で情報の同時共有が可能となり、メールアドレスの登録が不要でID利用でリアルタイム。既読管理・読了機能もついており情報や連絡事項が確実に届いた安心感がある反面、少しカジュアルな印象があることがデメリットと言えるかもしれません。

❷ 電話の活用法

双方向の同期型コミュニケーション。緊急性のある用件や、即返事が必要なこと。話し合って決める必要がある要件は電話が有効です。また、微妙なニュアンスを伝えたい時も直接相手の反応が分かる電話がベストな手段となりますが逆にタイムラグがないため、その場でのやり取りが全てを決めるため、確実に理解し合えるスムーズなやり取りにするための傾聴力と声のトーン・声の表情など伝達力が重要なスキルとなります。また、事前事後共にメモに残しておくという基本的なことも大切です。内容の重要度によっては、メールで連絡したあとに、フォローの意味で電話で確認する必要もあります。

➌ オンラインの活用法

Zoom・teams・Skypeなど、オンラインでのミーティングツールが充実しています。離れていてもどこからでも参加できるとても便利なツールです。デバイスや環境によって若干の不具合があっても大きな問題にはなりません。画面共有やブレイクアウトルームの活用でディスカッションも可能となっています。しかし、やはり表情の変化・態度や様子が読み取れないため疑問に感じているメンバーにタイムリーに気づけなかったり集中力をキープするにはホストが重要な役割を果たします(オーガナイザーや司会者)
人にモノを伝える話し方や意見の引き出し方など、高いコミュニケーション技術が求められます。

★ 3つのポイント

❶ 目的によって有効な手段を使い分ける・・・指示・確認・通達などの連絡事項・結論の変えようがないこと・相手の考えを聞くなどその内容にふさわしい手段を使う
❷ メール後の電話フォロー・・・受け手によっては複数の解釈ができること。期日が明確でない「いずれ」の内容などは送った安心感からお互いに忘れることを防ぐ
➌ 定期的に対面の機会を設ける・・・気が付いたら何ヶ月も会っていないとなると、業務上必要なことのみの報告・連絡となり部下との雑談がなくなり信頼関係も薄れていく危険がある


★ 対面コミュニケーション

人は言葉だけでなく、表情・態度・仕草で自分の思いを表します。オンラインが当たり前の近年ですが、計画的に対面の機会を設けることは大切です。逆に、対面でのミーティングのあとにオンラインでフォローすることも非常に有効な手段です。


2.人事評価者面談

年に1~2回程度、上司と部下でマンツーマンで評価面談を行うときに必要なポイントをいくつかあげてみます。

❶ まず環境を整える

落ち着いて話ができる個室を用意して、リラックスして話せる雰囲気を作ります。お互いが座る位置も関係します。あまり静かすぎる環境も、緊張しますのでそんなときは評価の良し悪しに関係なく笑顔の雑談から入るのも効果的です。

❷ 傾聴姿勢と質問力

いかに心を開いてもらうか?本音を引き出せるか?が大切です。積極的傾聴はもちろんですが、質問上手になることで部下自身が思い出して話しやすくなります。部下のモチベーションにつなげるためには、結果だけでなく「努力した過程」に焦点を当ててどんな思いで仕事しているのかを相互理解する必要があります。

➌ 自己評価と他者理解

まず最初に、その期間の自己評価・自己分析を聞きます。途中で口を挟みたくなっても最後まできちんと聞く姿勢が大切です。部下がもっと話したくなるような、上手な相づち・確認の言い換え・共感的理解などのスキルが求められます。良い点とその理由、改善すべき点や忠告とその理由を事前にまとめておくことが大切です。

➍ フィードバックスキル

自己評価に対するフィードバック → 今後へのアドバイスとなりますが、そのアドバイスを素直に受け入れてもらうには部下にとってはいかに自分を知ってくれているか?が鍵となります。課題や問題点の指摘は部下にとってショックな場合もあります。ここでは、発言ではなく「事実に基づいた行動」に焦点を当てて伝えることが大切です。

❺ 総括・まとめ

「何を」「どのくらい」「いつまでに」やるのかを明確にして共有します。具体的な数値目標だけでなく、どんな方法でやるか?達成を妨げる要因は何か?などについても事前に想定し共有しておけば、途中経過でのチェックや部下からの相談も受けやすくなります。面談終了時には、前向きに明るい気持ちになるよう上司からの励ましの言葉やいつでも相談できる関係作りも大切です。

3.ハラスメント防止対策

近年、ハラスメントという言葉が日常的に使われるようになりました。相手に対して言葉や行動などでいじめ・嫌がらせを行う迷惑行為のことです。傷つける意図がなくても相手が不快な感情を抱けばハラスメントが成立してしまうこともあります。又、相手がハラスメントだと感じたらそれはハラスメントである。という考え方もあるようですがそうではありません。そうではないという意味は、法的にどうか?という観点から見ると成立しないことがあるからです。そこまで行かなくとも社内で蔓延してしまう危険も隣り合わせですので、潜在的に不満を感じさせない環境作り、風土作りが重要な鍵です。更には「逆パワハラ」という言葉も聞くようになり、結局のところ防止策はなんなのか?を今一度考えてみる必要があります。

❶ ハラスメントが起こる背景

1.コミュニケーションレベル・・・普段から定期的にコミュニケーションを取らず何かあったときだけ連絡し合う関係で相互理解ができていない
2.自己理解不足・・・自分の対人傾向を理解しておらずプライドや自己顕示欲が高い・支配欲が強いなど内面にある傾向を自覚しないまま無意識での言動がある
3.他者理解不足・・・相手の気持ちを受け止めて共有・共感するスキル不足。相手の良いところより悪いところだけが目について不足した部分だけを指摘する傾向がある
4.情報開示不足・・・全員公平に情報が行き渡ることなく、偏ったメンバーにのみ情報提供する。メンバー共通で必要な情報か否かを精査しない。
5.ストレスマネジメント・・・自己の感情コントロールができず常にイライラしてストレスを溜め込みやすく言葉遣いも荒っぽくなりがちである

❷ ハラスメント対策

パワーハラスメントの定義のひとつである「適切な業務範囲における改善目的の指導」かどうか、の食い違いをなくす必要があります。「適切な・著しい・過度な」などあいまいな表現も多く、社内でそれぞれの基準を設けることも有効です。また、相手がパワハラだと感じないためには以下2つの整備が必要です。

1.職場の風土・・・出退社の際にお互いが必ず挨拶をしたり、必要な情報がチーム内で徹底共有されている。問題が起きたら皆で話し合って解決する。 現場の状況・現場の本音が組織に伝わっている。部門間を超えたコミュケーションがなされている。組織の目標に必要な行動規範が社員一人ひとりに浸透している。
2.職場の環境・・・失敗やミスを許す環境である。たとえ指導であっても人格やキャリアを否定することはない。立場・年齢・状況に配慮した指導が行われている。到底達成不可能な目標を与ない。近いポジションにいつでも相談できる人がいる。

➌ 上司のパワハラ・部下の逆ハラ

1.上司のパワハラ・・・セルフコントロールが必要です。自分の傾向を知り、抑えるべき衝動・思考・行動が起きてしまう自覚を持つことで冷静で客観的になることができます。自分自身の反応を良い方向に変えるセルフコントロールの一つがアンガーマネジメントです。身体的なダメージを与える暴力行為は論外ですが、言葉の暴力は無自覚のまま起きてしまうことがあります。相手に心理的負荷を与えないよう、自分自身を見直すことが大切です。パワハラ問題のサーベイでは、本人があとからあれはマズかったと気づいていることが意外に多かったそうです。それなら、事前にコントロールすることが出来るはずです。
2.部下からの逆ハラ・・・マメジメント能力の向上が必要です。部下一人ひとりの能力を的確に認識し部下それぞれに合わせた指導内容・スピードを本人と共有します。上司が遠慮したり委縮することなく「言うべきことが言える」ようになることが上司自身のストレス回避にもつながります。部下の不満を受け止め主体性を育てることで、不満を改善提案に変えさせるコーチングスキルを磨くことが有効です。また、ハラスメントの定義とは何か?に対する部下(社員)の意識啓発も未然防止につながります。

いずれのケースも服務規程違反や労働基準法違反以外のハラスメント対策としては、日々のコミュニケーションによる相互理解と信頼関係の構築が重要な鍵となります。

まとめ

いかがでしたか?今回は管理職に求められる3つのスキルについてお伝えしました。世代・時代の変化に伴い価値観の違いは人の数ほどあると感じています。一人ひとり異なる価値観・優先順位を全く同じにはできないまでも、その差を縮めることは可能です。管理者・管理職は孤独です。同じ悩みを持つ仲間同士が一堂に会し、情報交換を行い心の安心感と共通課題を共有することで各自の対策を見つける意味でも管理職研修は今後益々必要になってくると考えています。

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