この記事の目次
株式会社 ア・ソリューション 代表取締役 高橋 伸枝
1.接客する上で大切な要素
まず最初に「対応」と「応対」の違いをおさえておく必要があります。接客業の現場においての対応と言えばクレーム対応・緊急時対応などがあります。対応は状況や事柄に対してどのような措置を取るか?に対して行うことを指すのに対し「応対」は人に対して行うことを指します。たとえばお客様からの電話で「〇〇ありますか?」と聞かれた場合、「在庫を確認いたします」と言うのは電話対応。在庫がなかった場合「申し訳ございません。あいにく品切れしておりますがお時間をいただければお取り寄せが可能です」と言えば応対ということになります。対応はマニュアル化できますが「応対」となればマニュアル化できません。つまり接客の質を高めるためには対応ではなく「応対力」を高めることです。
● 接客応対3つのポイント
1.非言語コミュニケーション力を磨く
コミュニケーションとは、自分の思いを正しく伝えることと相手の思いを正しく理解することです。そのためには言葉・話の内容だけでなく、表情・仕草・態度で示すことが大切です。言葉や内容の裏付けが表情や態度である、とも言えます。お伝えする内容と表情などの非言語の部分が一致していないと、クレームに発展することもあります。お客様に「いらっしゃいませ」とご挨拶するときに笑顔が重要な理由は、言語・非言語が一致しないと歓迎されていると伝わらないからです。お客様にお詫びする時、申し訳ないという表情や姿勢になっていますか?ありがとうございます、と言う時はにこやかな表情で嬉しい気持ちが態度に表れているでしょうか?心から出る言葉なら、それに合わせた表情・態度になるだけでなく声のトーンも自然とそうなるはずです。マニュアル通りではなく、一人ひとり異なるお客様に通りいっぺんの対応ではなく「応対すること」を心がけましょう。また、お客様の反応を知るには言葉・話の内容だけでなくお客様の表情・動作が参考になるのは言うまでもありません。
2.話すことと聞くことのバランスを考える
「接客する」という仕事は文字通り、お客様に接することです。何を求めているのか?お客様の要望にお応えして商品・サービスと一緒に心の満足も持ち帰っていただくことが目的です。ついやってしまいがちなことは「しゃべりすぎること」です。お客様にいろいろ質問しないと、ご要望が分からない。商品説明をしないと良さを分かっていただけない。など様々な理由からスタッフの話す量がどうしても多くなります。ふさわしいものを紹介しようとするとどうしても質問攻めになってしまいます。一問一答を心がけて、お客様の反応や様子を見ながらそれに合わせることが大切です。つまり、接客業は話す仕事ではなく「聞く仕事」なのです。
3.お声がけのタイミングに気を付ける
お声がけとはファーストアプローチに限ったことではありません。お客様の滞在中に何度かお声をかけるシーンがあります。自由に見ていただくことと、放置することは違います。〇〇をお探しですか?などとお声をかけると「ちょっと見せてください」と言われることはよくあることです。これはスタッフを拒絶したわけではなく、タイミングが早すぎた可能性があります。こんな時は「どうぞごゆっくりご覧くださいませ。もし何か分からないことがありましたらいつでもお呼びくださいね」と一旦その場を離れて遠くから様子を見守りましょう。仮に呼ばれなくても、いくつかの商品を手に取って時間をかけて比較している様子の時は「ご一緒にお選びいたしましょうか?」などと必要ならお手伝いしますよ、と伝わる言葉を工夫しましょう。お客様の様子をうかがう時は、何か他のことをしながら意識だけお客様の方に向けておけば遠くからでも動きに気づくことができます。つまり、矢継ぎ早にお声がけをするのではなく「こんな行動をとったらこんな声かけをしよう」と自分なりに基準を作っておきましょう。
♦会話のバランスは話す30聞く70♦
✅お客様の興味をひくことを短い文章で伝えましょう
✅質問はクローズドクエスチョンとオープンクエスチョンを使い分けましょう
✅質問攻めにせずお客様の答を掘り下げて会話を進めましょう
✅お客様が話しやすいように適度な相づちを工夫しましょう
2.接客の6ステップに求められる要素
お客様の入店からお帰りまでには大きく分けて6段階の接客ステップがあります。
各ステップごとに必要なことをまとめます。
1stステップ お出迎え・・・ようこその気持ちを込めた歓迎のあいさつ
2ndステップ アプローチ・・・ ワンパターンでなくお客様の動きに合わせた言葉
3rdステップ 商品紹介・・・ 一方的な説明ではなく興味を確かめながら行う
4thステップ 購入決定・・・ 購入の意思表示があった時点でお客様の物という意識で商品を丁寧に扱う
5thステップ お会計・・・ 黙々とレジ作業をするのではなくお客様の選択をほめて商品の使い方などプラスになる情報を提供する
6thステップ お見送り・・・未購入であってもまた来て欲しい気持ちでイベント予告や発売予定のものなどを具体的に伝える
接客の質を向上させるにはテクニック的なことよりも、思い・気持ちがお客様にどう伝わるか?が大切です。一人ひとり異なるお客様への接客応対はお客様に喜んでもらいたい・楽しく過ごしてもらいたい・役に立ちたいという純粋な思いがあれば自ずと工夫が生まれます。
※ 「接客の声かけフレーズ10選」「あいさつとアプローチの基本」「ファーストアプローチのコツ」については他のコラムで詳しく紹介しています
お客様へのお声がけについて動画で解説しています
3.お客様に寄り添った接客
お客様は何を探しに来たのか?何がお望みなのか?何が欲しいのか?などを探ろうとすると、どうしても質問が多くなってしまいます。寄り添うという言葉は共感する・サポートすることと言えます。しかし、共感する前にお客様のお望みを「共有する」ことが先決です。よく話を聞かずに分かったつもりになってすぐに商品を紹介してはいけません。人それぞれですので、一言二言しか話さないお客様もいれば詳しく要望をお話する人もいます。分かりにくければストレートに質問しましょう。~はこういうことでしょうか?と、申しますと~ということですね?など。これは確認質問と言って、カン違いしてニーズと違うものをおススメしない秘訣でもあります。寄り添う接客とは、媚びを売ったりへりくだることではありません。お世辞も無用です。どんな小さな情報でも聞き逃さないことが寄り添う接客のカギです。また、聞き逃さないだけでなく「見逃さない」ことも大切です。上記でも紹介したように、コミュニケーションは言語・非言語で交わされます。ちゃんと見て・ちゃんと聞いていればお客様が何を求めているかが分かります。自分の言いたいことに集中しているとお客様の様子をうかがい知ることはできません。見て気づいて行動する。これが相手に寄り添った応対につながるのです。
まとめ
いかがでしたか?接客の質を高めようとするとどうしてもテクニック的な要素が浮かびます。しかし、本来人間が持つ「されてイヤなことは人にしない・されて嬉しいことをする」という心のありかたが接客の基本です。そのためにはお客様をよく見て、一方通行にならないコミュニケーションを心がけることです。但し、されて嬉しいことの方が人によって異なりまた、その程度も人それぞれです。だからこそ、何が嬉しいのか?どうされたら心地よいのか?を自分の価値観や主観ではなく、接客の中で感じ取ることです。入店からお帰りになるまでの間、言葉だけで会話してお客様のことを知ろうとせず、ようこそという歓迎の気持ちを最後まで持ち続けることが接客業に必要な心得なのです。
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