この記事の目次
株式会社 ア・ソリューション
代表取締役 髙橋 伸枝
1. 接客する目的とは?
何故、接客が必要なのか?当たり前の構図ですが、そこに販売員・店員など働く「人」がいる意味は接客を通じて顧客満足度を高める。そして使い続けてもらうためです。新規のお客様がリピートして定期的に利用していただくためには、接客技術を磨くことは言うまでもありません。世の中の変化するスピードが年々早くなっています。特に物販においてはインターネットの発展もあり、お客様はたくさん情報を持っています。そのためか、そもそも接客は本当に必要なのか?という疑問も聞こえてきます。商品によっては販売員・店員に聞かなくても一人完結型で買い物することは可能かもしれません。しかし、買い物の目的は欲しい物を手に入れるだけではありません。普段の疲れを癒したい・綺麗なものを見て楽しみたいなどお店に来るお客様は「物欲」以外の要素も大きいのです。販売員やスタッフの役割は売るためでもなく、商品説明をすることでもありません。リラックスして楽しめる時間を提供して、心で満足出来る環境を作るのが仕事です。これから紹介する接客パターンのうち、取り扱い商品や提供するサービス内容に照らしてどれがふさわしいのか?何にどう気を配るのか?について一度整理してみてはいかがでしょうか。
2. 接客の種類
大別すると、アパレルや化粧品など形ある製品を販売するケースと飲食店やホテルなど、形は残らないがそこで過ごす時間そのものだったり、美容師・エステティシャンのように技術と言う無形の提供物もあります。サービス業は範囲が広く、衣食住のうちレストランの「食」と不動産などの「住」も含まれます。また、ビジネスホテルやリゾートホテルなど滞在型施設なども快適に過ごすためにも接客は必須です。
① アパレル・化粧品・ジュエリーなど物品の販売
<3つのポイント>
- 商品を見ているお客様へのお声がけ・・・自由に見ていただくことと放置することは違います。いくつかのパターンを想定して声をかけるタイミングを決めておくことが大切です。例えば、一度離れた場所にもう一度戻ったときはその商品が気になっていると判断して「お探しのものは見つかりましたか?」と笑顔で声をかけましょう。
- クローズドクエスチョンで質問する・・・ハイかイイエで答えやすい簡単な質問でお客様の目的を知りましょう。接客に入る前の段階はお客様は警戒しています。いろいろ聞かれるのは嫌だ・自分で選びたいなど、販売員は必要ないと感じている可能性があります。そんなお客様の緊張を解くにはクローズドクエスチョンが有効です。例えば、「贈り物ですか?」と、母の日が近いなど年中行事に合わせた質問などが自然です。
- 接客に入ったらお客様主導で進める・・・この段階では、クローズドクエスチョンと文章で答えるオープンクエスチョンを使い分けましょう。ついやってしまいがちなのは、商品説明を一方的に続けてしまうことです。欲しい・検討したい商品が特定されたら、その商品の特徴や使い方などをシッカリ伝えるのは良いのですが、比較段階で一つの商品の話が長いとお客様は疲れてしまいます。そんな時、オープンクエスチョンが有効です。例えば「どんなときにお使いになりますか?「どのような色がお好みですか?」など、どんな・どのように・どれくらいなど話を掘り下げる聞きかたをしましょう。
② 飲食店・ホテル・美容室・エステティックサロンなどサービス/技術の提供
<3つのポイント>
- ご予約のお客様・・・第一声が重要です。「〇〇様ですね?お待ちしておりました」と最高の笑顔で伝えましょう。この第一声で自分は歓迎されている、と感じてその後の居心地に影響します。何事も第一印象が大切ですが、わざわざ予約して来て下さったことへの感謝の気持ちをそのまま表現しましょう。混雑時など、ついその気持ちを忘れてしまい流れ作業で事務的な案内になりがちです。それではその後滞在する間、楽しくないばかりか、少し待っただけでも遅い・対応が悪いと感じてしまうものです。
- 初めてのお客様・・・たくさんあるお店の中からよくぞ選んで下さいました、という気持ちを伝えましょう。飲食店なら本日のおススメ料理の案内・ホテル内の便利な施設や近くのコンビニを案内・美容室やエステティックサロンなら担当者が名前を名乗って挨拶して期待感を高めましょう。初めて利用する際は勝手が分からないので、単に「ではこちらへどうぞ」だけでは不安になってしまいます。予約したお客様も初めてのケースがあるので同じ気配りが必要ですね。
- 滞在時間に合わせた気配り・・・食事の時間も一人と複数人では滞在時間が違いますよね。一人の場合は、食べること・飲むことが目的です。短い滞在時間でも、必ず一度は近くに行って水がなくなっていないか?テーブルに薬は置いてないか?などをチェックをしましょう。複数人の場合は食事プラス話をしてゆっくり過ごすことが目的です。話が盛り上がって一人だけグラスが空になっていないか?空いた皿が邪魔になっていないか?などが最低限のチェック項目です。ここで大事なことがあります。せっかく話が盛り上がっているのに、それを邪魔するかのように声をかけることは避けましょう。一瞬のことでも、場の雰囲気を壊してしまいます。せめて「お話し中恐れ入ります」と一言添えましょう。また、滞在時間の長い美容室やエステティックサロンではエアコンが効きすぎていないか?何か必要なことはないか?など何度か声をかけましょう。トイレに行きたいが言い出すタイミングを失っているお客様もいらっしゃいます。ホテルではお部屋に入ればプライベート空間なのでチェックインが終われば一安心です。しかし、滞在中は待ちの姿勢ではなくフロントで見かけたら「お困りのことはありませんか?」など声をかけると居心地の良さが格段にアップします。
こう整理してみると、物を販売する接客よりもサービスや技術を提供する業種の方がお客様に気配りすべき要素が多いことが分かります。共通して言えることは、滞在中いかに快適に不自由なく過ごしていただくか?ということです。
● 癒しの心理
5つある顧客心理の中で最も意識すべきなのは癒されたいという心理です。洋服や靴を買うにも、食事をするにも、ホテルに宿泊する際も日常とは違う空間を求めてきます。綺麗なものを見て安らぎたい・美味しい物を食べて癒されたいなど精神的な要素が大きく関係しています。だからこそ、そこで働くスタッフは「接客」を通じてお客様をリラックスさせる必要があります。楽しかった・美味しかったという感覚はモノだけではなく「人」の応対によるところが大きいのです。
3. 代表的な2つのサービス
同じ物や「こと」を提供するお店/施設はたくさんあります。会社や家から近いから、という利便性も一つの要素ですがリピートしていただくためには、そこに来るメリットを感じてもらうことも必要です。大きく分けると以下2つのサービスがあります。
◆ 物理的サービス
ノベルティなどちょっとしたギフトを渡すモノによるサービス
◆ 金銭的サービス
値引き・セールなどの期間限定サービス / 送料無料サービス
物理的な要素も金銭的な要素もちろん有効なサービスです。しかし、それだけで顧客は増えるでしょうか。人は皆一度何かをもらうと次はもっといいものを期待してそれがずっと続くことを望んでしまいます。極端に言えば、それがないと利用しない・買わないという現象が起きることもあります。そう考えるとやはり、接客の質を高めて居心地の良さ・快適な場所を演出することを常にスキルアップすべきではないでしょうか。
4. 接客の基本3大要素
「接客する」仕事には3つの基本要素があります。世代・性別に関係なく、利用して下さる全てのお客様が好印象を持ってくれるようにそして、せっかく行くならあのお店・あの人に接客してもらいたいと思っていただきたいですよね。
1.接客マナー
マナーとは作法・礼儀という意味ですが、接客におけるマナーは一般的なテーブルマナーや慶弔マナーとは少し違います。儀礼的な礼節というより、お客様に不快感を与えずそのお店や企業のイメージに直結する接客マナーは基本中の基本です。その代表的なものが「笑顔と挨拶」「気持ちの伝わるお辞儀」「身だしなみ」「立ち居振る舞い」「適切な言葉遣い」です。失礼のないように、不快感を与えないようにという漠然とした定義を体現する必要があります。
・ご来店時、歓迎を伝える笑顔と声のトーン
・事務仕事・付帯業務の手を止めてご挨拶
・お詫び・感謝など気持ちを込めたお辞儀の角度
・清潔感のある服装・メイクアップ
・お客様の前を横切らない
・お客様の背後から声をかけない
・敬語を正しく使い分ける など
◆ 基本動作マナー
2.お客様サポート
お客様をサポートする、とはお客様が欲しいもの・求めることが手に入るようにお手伝いするという意味です。そのためにはお客様から声をかけるまで待つのではなく、どのタイミングでどんな声をかけたら役に立てるか?を考えておく必要があります。サポートが必要だな、と気づくためにはやはり「目配り・気配り」をして「心配り」をする。この心配りがサポートするという行動につながります。見て気づいてしてあげる、と言った方が分かりやすかもしれません。お客様に張り付いている必要はなく、基準を決めておくとこが鍵です。「今は声をかけないで欲しいメッセージ」を受け取ることもサポートのひとつです。以下のようなときは、サポートを申し出ましょう。
・キョロキョロとあたりを見回している
・商品を持ってウロウロしている
・腕のあたりをさすっている
・バッグを右・左と何度も持ち替えている
・ショーケースをじっと覗き込んでいる
・お子様が泣いたり走り回っている
・イヤホンをつけて商品を見ている など
※ いつ聞きたいことが出てきてもいいように放置するのでなく見守りましょう
3.対人コミュニケーション
接客はお客様とのコミュニケーションを如何にスムーズにするか?がポイントです。コミュニケーションには2つの技術が必要です。ひとつは、自分の言いたいことを正しく伝える。もうひとつは、相手の言いたいことを正しく理解する。この一見単純なことが、自分の都合や主観・思い込みによって歪んでしまうことが多々あります。初めて会うお客様がどんな人なのか?何を求めているのか?などそう簡単に分かるはずはありませんよね。いろいろ想像せずにお客様の様子に合わせた声かけをきっかけに接客に入れれば自ずとお客様の情報が得られます。自分が何をサポートしたいのか?を考えて自分の言葉でお客様に申し出てみましょう。きっとこうだろう、とアタリをつけてはいけません。
・自分の表情と声のトーンを演出する
・お客様の話は最後まで聞く
・適度な相づちで理解しているというメッセージを送る
・分かりにくいことは遠慮せず確認する
・ご要望にお応えできないときは別の提案をする
・お客様からの質問は一問一答を心がける
・あいまいな表現は避ける
・お客様の話は内容だけでなく表情や仕草にも気を配る など
5. 顧客目線の環境作り
ここまでは「接客する行為」の注意事項や必要なことをお伝えしてきました。接客業、接客・販売の仕事はお店や施設自体の環境を整えることも重要なことです。お客様が快適に過ごすためには、接客応対だけでなくハード面の整備も不可欠です。
1.クリンリネス
見やすい・買いやすい・過ごしやすい場所にするためには清潔感があって生活感のない場所を提供することが必要です。特にレジはお客様が最後に利用する大切な場所です。事務用品が乱雑に置かれていたり、汚れたカウンターの上でお買い上げ商品をたたむようなことは避けましょう。スタッフにとって使い勝手のいい場所は、お客様にとって使いにくい場所です。スタッフだけでなくお店・施設の身だしなみも整えましょう。
◆ 店内クリンリネス5Sアクション
❶ 整理・・・レジ・カウンター周りが雑然としていませんか?
❷ 整頓・・・ダンボールなどの備品がお客様から見えるところに置かれていませんか?
➌ 清潔・・・出入口・床・試着室に髪の毛やゴミが落ちていませんか?鏡はキレイに磨いてありますか?
➍ 清掃・・・ショーケース・什器に「手垢」「ホコリ」がついていませんか?
❺ シェア・・・スタッフ全員で共有・協力し合っていますか?
2. 店舗ディスプレイ
店舗のディスプレイは、商品を魅力的に見せてお客様のアイキャッチにつなげる重要な役割を果たします。通路から思わず足を止めて店内に誘導するには、いくつか条件がありますがその一部を紹介します。特に百貨店を始めとする店舗には、毎日来るお客様もいらっしゃいます。いつ来ても同じところに同じ商品が置いてあると、新鮮味がないので購買意欲が湧きません。基本的には毎日ディスプレイを変えるようにしましょう。
◆ 効果的なディスプレイ
❶ 季節感・・・四季を取り入れるだけでなく「その日」の天気に合わせていますか?
❷ グルーピング・・・アイテム単体・セットアップなど関連性の高い商品がグルーピングされていますか?
➌ 清潔感・・・商品だけでなく什器もピカピカに磨いてありますか?
➍ テーマ・・・何を伝えたいのかテーマは明確ですか?
❺ 配置・・・ 同じ物が違う場所にバラバラに置いてありませんか?
❻ 配色・・・寒色系・暖色系など色彩の基本を意識していますか?
❼ 導線・・・お客様が歩く導線をふさいでいませんか?お店の奥まで見渡せますか?(陳列商品が多すぎる)
3. 店内・施設内のムード
雰囲気・ムードは目に見えないものです。また、それは人が作り出すものです。以下のチェック項目を参考に、入りやすいムードを演出しましょう。
<チェックポイント>
✅ スタッフ同士が一か所に固まって話をしている
✅ 入口からスタッフの姿が一人も見えない
✅ 入口をふさぐようにスタッフが立っている
✅ 下を向いて事務作業を続けている(いらっしゃいませ、とは言うが作業に戻る)
✅ 納品のダンボールなどが通路に置いてある
✅ 前のお客様が商品を広げたままで雑然としている
✅ 店長・上司が店内でスタッフを叱っている(すぐに笑顔で対応できない)
付帯業務の時間帯を、開店から一時間以内など比較的お客様が少ない時間を選んで実施しましょう。また、途中で手を止めずに「ながら挨拶」もタブーです。
まとめ
顧客はお金のかからない広告塔です。やはりマスコミよりクチコミ、ではないでしょうか。お客様は、どういいのか?何が快適なのか?広告よりも臨場感たっぷりに自分の言葉で宣伝してくれます。親しい友人や知り合いに「行ってみたら?」と勧めてもらえるように、紹介した5つの要素について一度見直してみてはいかがでしょう。
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