この記事の目次
株式会社ア・ソリューション 代表取締役 高橋伸枝
1.待機の姿勢
お客様は何をもって入りやすい店かそうでないかを判断するのでしょう?待機というのはいつどこからお客様がいらっしゃってもいいように「お出迎え」の準備をすることです。ここで注意することは、この時点でお客様に無理なアイコンタクトをしたり、お出迎えをアピールするかのように入り口に立ったりしないということです。何故ならば、お客様にある誤解を与えてしまうかもしれないからです。売ろうと待ち構えている販売員。悲しいことですが入店前のお客様の目には私たちの姿がそう映ってしまうことがあるのです。お客様が入りづらいお店だな・・・と思わないように配慮しましょう。お出迎えの段階では、お客様に直接的な働きかけはしません。「是非入店なさってください」と心で願いながら動きのある待機姿勢で商品の整理や手入れなどをしながらお客様の入店の一歩を待ちましょう。
◆ 入店を促す待機姿勢
お客様が来るのをただ待っているだけでなく、生き生きと店内を動いて活気のある雰囲気を意識して作りましょう。
* 商品整理 ・・・・・・色・素材など季節感のある見やすい陳列にしましょう
❶ 同じものがバラバラに置いていないか? ❷ サイズごとにまとまっているか? など
* ディスプレイ ・・・・開店前の基本業務ですが常に新鮮味を意識しましょう
❶ 売れ筋のものが前面に出ているか? ❷ 売りたいものが目立っているか? など
* クリンリネス・・・・・事務用品などで雑然としないよう清潔感を演出しましょう
❶ レジ/カウンター周り ❷ ダンボールなど備品 ➌ 出入口・床 ➍ ショーケース・什器
* 商品知識の習得
お客様に商品を紹介するときに必要な商品特徴や質問を想定して、すぐに答えられるようにウォーミングアップしましょう。一つの商品に対して、同じ特徴を何度も繰り返すのではなく自分なりの表現方法を心の中でつぶやきながら工夫すると、セールストークの幅が広がって接客がスムーズになります。
* 商品チェック
不良品はないか?サイズは揃っているか?シワになって商品の印象を悪くしていないか?など、自分が買う気持ちになってお客様の目線でチェックしましょう。
◆ 入店を妨げる待機姿勢
- ヒマ そうに立っているスタッフがいる
- 無表情でやる気のなさそうなスタッフがいる
- スタッフ同士で私語雑談をしている
- 全員が下を向いて業務に没頭 している
- 出入口をふさぐ場所にスタッフが立っている
- 真正面にスタッフが待ち構えている
こんなお店にお客様は入りたいと思いませんよね。本当に業務上の話をしていても、お客様には私語雑談に見えてしまいます。スタッフ同士で必要な会話をする時は、目線だけは入り口に向けたままにしましょう。スタッフ間の会話が全くないのも不自然だし、殺伐とした印象を与えます。本当に話に夢中にならないよう、気を付けましょう。
2.お出迎えのしかた
お客様が入店なさったら、以下のことを意識しましょう。
① 作業の手を止める ② お腹(心)の中で「ようこそいらして下さいました」とつぶやく ③ 笑顔の軽いアイコンタクトで「いらっしゃいませ」と言う
午前中であれば「おはようございます。いらっしゃいませ」午後なら「いらっしゃいませ。こんにちは」と、一言添えるとリラックスした雰囲気が作れます。ポイントは、数あるお店の中から、よくぞ私のいるお店・ブランドを選んでくださいましたという、感謝を歓迎の意を込めた「いらっしゃいませ」であることが重要です。ちなみに、作業の手を休めずにお客様を見ることもせずに言う「いらっしゃいませ」は、お客様より業務を優先したことになるのでとても悪い印象を与えるのでやめましょう。もう少しで終わるから・・という安易な気持ちが一瞬でお客様を遠ざけることになるのです。
お客様が入ってみたいと思うお店は?
- スタッフが笑顔で親しみやすく親切そう!
- スタッフがおしゃれで清潔感がある!
- 接客を受けている他のお客様が楽しそう !
- スタッフがキビキビと動いていて活気がある!
- スタッフが見える位置で入口に気配りしている!
通りがかりのお客様がちょっと入ってみようかな、と思えるような演出をしましょう。
3.心を込めたアプローチ
◆ アプローチのタイミング
アプローチの言葉をかけるタイミングって難しいですよね。自由に見ていただこうと思っただけなのにあまり遅いとお客様は「放っておかれた、私には興味がないのかな」と思われてしまいます。早すぎると「売る気満々だな、しつこいかも」と誤解されてしまうのです。タイミングというのは時間ではありません。何秒後ならいいのか?という問題ではなく、お客様の動作と状況をヒントにしましょう。
* お客様と目が合った * お客様が商品を手に取った * キョロキョロと何か探している * 鏡の前で合わせている * ショーケースの前で立ち止まって見ている
こんな時は、何かしら声をかける必要があります。
◆ アプローチの言葉
出来るだけ短い文章で声をかけましょう。やってはいけないことは、一方的な商品説明です。見ているものが欲しいものとは限らないからです。ちょっと、手を触れただけ。ちょっと気になっただけ。と言う最初の段階で長々と説明されると、せっかくの興味が薄れてしまいます。そして、お客様が無理に答えなくても済むような配慮が必要です。
* お探しのものはございましたか? * 贈り物でございますか? * ご一緒にお選びいたしましょうか? * この秋の新作なんです * あちらにも似たものがございます
このように質問形式も紹介トークも、一言で終わらせる文章を工夫しましょう。お客様が何か買わなきゃ、とプレッシャーを感じないような差しさわりのない言葉が有効です。
◆ 気を付けるべきこと
どんなお客様が来ても、どんな状況でもアプローチの言葉がワンパターンになるのは避けましょう。習慣化していると、反射的に誰にでも同じ言葉をかけてしまうものです。ちゃんとお客様の動きと様子に合わせた言葉をかけましょう。下見の場合もあるし、何も考えずただフラッと立ち寄って何となく近くにある商品を手に取るということもあります。そんな時、財布を見ていたら「財布をお探しですか?」と言われてしまうと、別に探してはいないけど感覚的には、いいなと思っただけ。という場合、お客様は答えようがないですよね?この場合は探す、というフレーズよりも「非常に使いやすくて丈夫なレザーですよ」というような、興味を引く一言トークがおススメです。
あいさつとアプローチについて動画で解説しています
4.お客様が無反応な理由
私の研修やセミナーで、アプローチしてもお客様に無視されて心が折れそうです・・・という声を数多く耳にします。中には、接客自体がわずらわしいからそっとしておいて欲しいというお客様もいらっしゃいます。でも、その判断はどうやってするのでしょう?声をかけたら無視したお客様全員が、そっとしておいて欲しいのでしょうか?それは違います。タイミングが早すぎたり、いろいろ聞かれるのがわずらわしいと感じさせていることが主な原因です。実際に、最初は無視したが途中からスタッフが必要になる場面はたくさんあります。セルフショップでない限り、何かを買おうかなと思っていれば何らかの形でスタッフの手助けは必要ですよね。これ買おう、と一人で決めたけどサイズがない・・・これの色違いはないのかな・・・などなど様々です。以下の点に気を付けて、最初は無反応でも、途中から「お客様が声を話しかけやすい自分」を演出しておきましょう。
一度無視したら二度と近寄って来ない、というスタッフは「やっぱり売る気満々だったんだ」「私は買わないお客だと思ったのかな」と誤解されてしまいます。
1) 見ている商品をそのまま説明する・・・ × そちらは黒のスーツです
2) いきなり今日のファッションに合うと伝える・・・× 今日のパンツにピッタリです
3) 何かを探していると決めつける・・・ × どんなものを(何を)お探しですか?
つまり・・・お客様を無反応にしているのはスタッフの方かもしれません。なんて答えたらいいのか分からず反応できない、というお客様の心理を理解して工夫しましょう。もちろん、最初のあいさつでつまづいたら次のステップはありません。
5.まとめ
いかがでしたか?まだ経験の浅い方も、ベテランでも「あいさつとアプローチ」は接客業をやっている限り日々創意工夫です。十人十色なので、これが正解というものはありません。仮に自分がお客様だったら声をかけられたくないからと言って、お店に来るお客様も同じだと決めつけてはいけませんよね。相手の身になる、ということは一人ひとり違うお客様に合わせる。ということです。ようこそ!と心で唱えてご来店への感謝の気持ちで対応しましょう。
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