この記事の目次

株式会社 ア・ソリューション 代表取締役 髙橋伸枝
1. 中間管理職に求めること
中間管理職はトップマネジメント=社長を始めとする経営陣と現場をつなぐ役割りを担っています。つなぐ、という意味合いからメインの仕事はパイプ役と言われますが、上司と部下の板挟みで大変だという印象があります。上下の板挟みにならないためには、経営者の視点で考えて部下の目線で伝えることが重要です。会社経営にはトップダウン・ボトムアップという2つの意思決定の方式があり、ボトムアップは中間管理職の役目と言えます。現場の声を吸い上げる目的は2つあります。1.現場は直接顧客と接しているため、顧客の反応や情報を企画・商品などの開発に活かす 2.現場で働く社員のES(従業員満足度)を高める この目的からすると吸い上げた声や意見をそのまま上長に伝えるのではなく、何を取り上げるべきか?など内容の取捨選択も必要です。何をどう反映させるのか?それによってどんな成果があるのか?について自分の考えを持ってトップに報告・提案することが求められます。効率的な組織のパフォーマンス向上につながるかどうか、まさに中間管理職の果たすべき役割次第ということになります。
2.強化すべきスキル
既にその任に就いている人・これから昇格する人も含めて中間管理職として必要な知識・技術・マインドなどの強化すべきスキルをテーマ別に整理します。
♦ 主なテーマ
1.マネジメント基礎
❶ 組織マネジメント ➡ 組織のパフォーマンスを最大限に発揮するためにはタスク管理/スケジュール管理/PDCAの3つの要素が不可欠です。さらには、チームメンバーと信頼関係を築くリーダーシップが求められます。また、他部門との連携・調整役でもあるため情報共有など横のつながりを円滑にする必要があります。
❷ セルフマネジメント ➡ 自己管理としてストレスマネジメント~感情コントロールを行うことが必要です。そのためには客観的な視点で自分を見つめる・自分の強みを自覚することから始めます。なりたい自分を描いて、自己啓発/自己研鑽を自発的に行うマインド構築が必要です。
2.問題発見・課題解決力
❶ 問題発見 ➡ 今は問題がなくてもこれから先に起こるかもしれないことを想定する先見力・洞察力が必要です。仮に問題が起きても備えがあればマイナスを最小限に食い止めることができます。
❷ 課題実行力 ➡ 問題を解決するためには、誰が何をどうするか?に基づく的確な課題設定が必要です。現実的で実行可能な課題を選定してメンバー全員を巻き込んで実行することが問題解決につながります。
3.部下育成・指導
❶ 部下育成 ➡ 一人ひとり異なる部下を正しく分析することから始めます。正しい分析をするためには知識・技術・態度などに分けて、不足している部分や評価できる部分を書き出します。それを本人の自覚とすり合わせして育成プランを作成します。次に、定期面談の時期/所要時間/場所を予め決めておき、フィードバックします。
❷ 部下指導 ➡ 指導も育成の一環ですが、指示・依頼したことを確実に実行させることが指導の目的です。いかに分かりやすく伝えるか?いかにやる気にさせるか?その仕事をやる意義を理解させることが実行につながります。そのためには数値化・言語化のスキルアップが重要なカギです。
4.リスクマネジメント/コンプライアンス
❶ リスクマネジメント ➡ 業種によってリスクヘッジも異なりますが、大別すると物的リスク・情報リスク・人的リスクに分けられます。その結果、顧客の信用を失い業績悪化を招くことにつながるので、まずリスクを知ることからスタートしてリスク管理につなげます。
❷ コンプライアンス ➡ まず、コンプライアンスの基本/種類を理解することが必要です。ハラスメント防止対策などの管理マニュアルを作成して、法令遵守に基づく自社内におけるコンプライアンスを分かりやすく具体化することが必要です。
5.コミュニケーション
社内外のコミュニケーションスキルは、上記1~4を実行する上での土台となります。相手と信頼関係を築くスキル(ラポール形成)には① アクティブリスニング ② プレゼンテーション ③ 共感スキル ④ 承認スキル ⑤ 相互尊重 ⑥ 世代間ギャップを埋める ことが必要です。 また、コミュニケーションの方法が多様化しているので、SNS/メール/チャットなど対面以外のリモートコミュニケーションのスキルが求められます。口頭・文書にも違いがあるので表現力と伝達力を磨く必要があります。
♦ フィードバック ♦

フィードバックとは行った仕事について上司から部下に対して評価・改善点を伝える業績評価という解釈が一般的です。しかし、上司と部下の相互理解のために重要なのは「状況共有」を目的とした定期的なフィードバックです。日々の忙しい業務の中で時間を工夫する必要があります。
3. 育成プラン例
これから中間管理職になる人を育成する場合、基本となるべき知識を身に付けることはもちろんですが、何故自分が選ばれたのか?会社が自分に期待することは何か?をしっかりと理解して受け止めることが成功のカギです。社歴が長いから、プレーヤーとして優秀だからという理由ではなく自分の存在感を高めることにつながれば頼もしい中間管理職が誕生します。
<Step例>

4. 役割を果たすための3大要素
中間管理職の役割を全うするためには、以下の3つの要素が求められます。上長と部下の架け橋となり、他部門とのスムーズな協力体制を作ることが成功の秘訣です。また、全て自分一人で抱え込むのではなく、他者に協力を求めたり相談するなど周囲を巻き込んでいくオープンな姿勢が必要です。

5. キャリアと世代を考慮する
その会社での勤続年数・経験によって、また、前職のキャリアによっても個人の保有スキルは異なります。懸念すべき点として、今まで見聞きした情報や自分の体験を通して得た主観による思い込みや先入観です。大変そうだな・・・プライベートの時間がなくなるのでは?など、やる気の足を引っ張る要素はいくつかあります。育成stepで紹介した最初の面談を活用して、就任前に良くないイメージや思い込みを払拭して真っ新な状態にしておくことで前向きになれます。逆に、自社他社を問わず、長年のキャリアからくる起こりやすい事例として「前は〇〇だった」「今までは〇〇でうまくいった」「××するとこうなる」などの決めつけです。また、昇格した場合は※ロワーマネジメント時代とは権限も責任の大きさも異なることを自覚しなければなりません。企業によってはいわゆるZ世代が中間管理職に抜擢されるケースも少なくありません。Z世代がZ世代を育てる時代になったとも言えます。世代間で経験値や環境の違いから生まれるギャップはいくつもあります。その時代時代で、そう考える背景が違うので「普通と当たり前」の基準も異なります。肌で感じる・雰囲気を読み取る・見て覚えるというあいまいな指導法は、私自身が失敗した3原則です。いつの時代も必要なことはやはり「命令」でなく「説明」ではないでしょうか。
※ロワーマネジメント:プロジェクトリーダーや主任クラス
まとめ
いかがでしたか?会社方針や企業理念に基づいて目標達成し続けるために重要な役割を担うのは中間管理職です。どうしても、上と下の板挟みという不安がつきまといます。しかし、パイプ役としての役割を正しく理解して実行できれば自己成長にも自己実現にもつながります。いつまでも中間ではなく管理職になることを目指して、その貴重な準備期間をどう過ごすか?何を成果とするか?周りの評価だけでなく個人のビジョンメイキングも大事なモチベーションなのです。
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