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接客研修と言っても、そのテーマは多岐に亘ります。物販とサービス業によっても身に付けるべきスキルは違ってきます。しかし、接客業として基本となる要素には共通点があります。それを踏まえて効果的な研修のやり方についてのポイントを紹介していきます。

株式会社ア・ソリューション 代表取締役 高橋伸枝

1.接客研修はどんな時に必要か

業績が芳しくない/目標達成できない
● スタッフが多数入れ替わった
● 新店舗がオープンして店舗数が増えた
● 客数が減少し売上げも低迷している
● お客様からのクレームが増えている
● 店長の異動や新規採用があった
● 新製品/新ブランドを立ち上げた

こんな時は、研修を実施するタイミングです。顧客から支持されるショップ作りのために会社として「接客スタンダード」を確立することが可能になります。

2.接客研修に取り入れるべきこと

❶ 接客マナー・接遇スキル

❦ 8つの基本行動

① 心のこもった挨拶・・・歓迎の気持ちをお伝えする
② 身だしなみ・・・清潔感のある服装/ヘアメイク
③ 正しい言葉遣い・・・正しい敬語/丁寧語
④ 美しい立ち居振る舞い・・・好感を与える所作/動作
⑤ 表情の演出・・・思いを伝える豊かな表情
⑥ お辞儀の使い分け・・・会釈/敬礼/最敬礼の適切な使い方
⑦ 待機の姿勢・・・入りやすい印象の演出
⑧ タイミングの良い声かけ・・・声かけの基準

◆ 研修方法 ◆ まず、必要項目のチェック表を作成し現状の接客を自己チェックします。次に顧客心理を学び、気づきを与えることで強みを活かし不足してる点を補い、改善できるように自覚を促します。自分の言動がお客様にどんな影響を与えるのか?自分のやるべきことは何か?なんのために実行し、それがどんな成果に結びつくのか?ということを体感できるようにロールプレイングなど動きを取り入れた研修のやり方が効果的です。

❷ 目配り・気配り・心遣い

❦ ケーススタディ例

① お急ぎの様子できょろきょろと店内を見ているお客様
② 小さなお子さま連れ/ご年配のお客様
③ イヤホンをつけて店内をゆっくりと見ているお客様
④ 大きな荷物を重たそうに持っているお客様
⑤ 他のスタッフが対応中にずっと待っているお客様  など

◆ 研修方法 ◆ いくつか考えられるケーススタディを用意し、どうすることがそのお客様にとっての接客サービスなのか?それをやった結果のメリットを個人ワークやペアワークで自らが答えを導き出せるようにします。講師は、接客業の現場で経験のある人が望ましく受講者が出した答えに対して的確なフィードバックができることが必要です。又、店舗のロケーションや環境によって様々な方法がありますので正解を一つに絞るのではなく自店にふさわしい方法を見つけることも大切です。

➌ 円滑なコミュニケーション

❦ 接客コミュニケーション

① アクティブリスニング・・・積極的傾聴で話す&聞くバランス
② 共感的理解・・・お客様の気持ちになって心の声を聴く
③ 気分を害するNGワード・・・誤解を招く表現/言葉の注意点
④ 空間管理・・・パーソナルスペースの理解
⑤ 電話応対の基本・・・かける・受ける2つのコミュニケーション
⑥ クレーム対応・・・クレームの種類と対応法         
⑦ SNSを使ったアフターフォロー・・・書いて伝えるコミュニケーション  など

◆ 研修方法 ◆ お客様への声かけ位置・言葉を始めとし、言語・非言語のコミュニケーション法についてグループワークとロールプレイングを取り入れます。お客様役とスタッフ役を交代して行うことで相手の気持ちを深く知ることができます。第三者のコメントだけでなく、お客様役として感じたことが一番の収穫です。多様化する顧客ニーズに対応できるよう、世代年代の違うお客様とのコミュニケーション技術を身に付けることが必要です。コミュニケーションというテーマこそ、理屈や理論ではなく体感することが何よりも効果的です。

3.接客研修のやり方

研修には主に2つの方法があります。①集合研修 ②OJT研修 集合研修は会場に一同が介する対面式とリモートで行う非対面式があります。どちらもメリット・デメリットがありますので、テーマや状況に応じて使い分けるのが理想です。また、知識のインプットだけでなく 受講者の考えを受け止めて最適な方法を導き出すアウトプット法(ファシリテーション)が効果的です。
※ ファシリテーション法:様々な意見や考えを整理しつつ重要なポイントを引き出して最後には議論を収束して参加者の合意をサポートする方法

❦ 集合研修(対面)のメリット・デメリット

現場を離れて行うため、スタッフ人数が手薄になるのがデメリットです。シフト調整や繁忙期を避けた日程にすることでダメージは防げます。メリットは、普段違うお店にいる仲間との情報交換・情報共有ができることです。それによって自分の悩みを解決できたり、同じような思いをしている仲間の存在がモチベーションになります。また、テーマの一つである「コミュニケーション」は相手の表情・仕草などをその場で感じ取ることができるのも大きなメリットです。

❦ リモート研修のメリット・デメリット

会場に移動する時間や交通費というコストカットがメリットです。また、少々の体調不良なら自宅からの参加も可能ですが、デバイスが充実していることが条件となります。デメリットは、グループワークやロールプレイングなどの体感形式を取り入れたい場合に準備と管理に時間を要することです。一方通行の講義であればリモートでも大きな問題はないのですが、お互いにやり取りするためには相手の表情・仕草から読み取ることが難しくなることもデメリットの一つです。

❦ OJT研修のメリット・デメリット

講師が現場に出向いて行う研修です。メリットは、営業中に本物のお客様の接客についてその場でフィードバックできることです。また、休憩時間を活用して店長やスタッフと話すことで悩みを解決したり理解が深まることもメリットです。デメリットは、終日入店となると対象者が多い場合、所要日数が多くなることです。一日3時間程度の実施も可能ですが、実際に行ってみないとその日の客数や状況が分からないということもデメリットの一つです。対象店舗が少ない場合に向いています。

4.接客研修の手順

研修を効果的に行うには、事前準備が大切です。受講者が「受ける気」になるモチベーションがあれば、得られる成果も大きくなります。研修に対するイメージを良くすることと出来ていないから「受けさせられる」という感覚を持たせないことが鍵です。

外部研修のステップ 一例

❶ テーマ・課題についての擦り合わせ・・・研修の目的に沿って最適な方法を決定
❷ テーマに基づいたプログラム提出・・・課題克服に向けた相応しいカリキュラム
➌ 事前アンケート・・・現状の悩み・実行していることを知り研修内にてフィードバックすることで当事者意識を立ち上げる
➍ 研修実施・・・集合研修またはOJT研修の実施
❺ 受講レポート・・・受講者からの感想/質問/決意表明
❻ 受講レポートへのフィードバック・・・講師より回答/所見
※ 一回コース~三回コースなどテーマに応じた設定

これが基本形です。社内研修を行う場合は、➌~❻の流れとなります。手順の中で大切なことは受講者が前向きな気持ちで参加するための事前準備です。受講する人が「学ぶ・教わる」謙虚な姿勢と今、やっていることへの「肯定感・自信」が研修成功の重要なカギとなるのです。

5.研修成果の測定法

研修を実施した結果、何が変わったのか変わらないのか?検証する必要があります。一方通行の講義を聞かせるセミナー形式であれば、レポートなどで理解を確かめることが可能で「意識改革」が望めます。しかし、現場と講師の2way式の研修となると「理解・納得」から「行動変化」に結びつける必要があります。

❶ 表情・行動変化

明るい笑顔とやる気に満ちた表情。積極的に新しい方法を試すチャレンジ精神。自発的な行動と振り返りを怠らない姿勢。

❷ 業績の変化

客数増加。新規客のリピート率アップ。お客様の滞留時間アップ。物販であれば買上率アップ。サービス業であれば利用回数アップ。

➌ 社員の定着率アップ

長期的な展望として、受講したスタッフの離職率低下に結びつけることも目的です。現状に満足せず、課題と向き合って日々努力することでお客様が増える・売上も増えるという達成感が「やりがい」になればやる気が継続します。

まとめ

いかがでしたか?接客研修は、受講者の意識改革・スキルアップ・モチベーションアップがキーワードです。自分流に捕らわれず研修で得た「気づき」「ヒント」を自分のものにすることで、行動変化につなげる。そして成功体験を増やすことが研修の意義だと考えています。

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